フエの王墓を1か所だけ選ぶなら、私はカイディン帝廟(Lăng Khải Định)をすすめます。灰色の石段を上り切った先の宮殿に入ると、壁も天井も陶磁器のかけらと金色の装飾で埋め尽くされていて、外観との落差に思わず足が止まりました。入場料は日本のランチ1回分ほどで、ダナンからの日帰り旅行にも組み込めます。

カイディン帝廟とは
グエン朝第12代皇帝カイディン(在位1916〜1925年)の陵墓で、正式名称はウン陵。日本語では「啓定帝陵」と書かれることもあります。1920年に着工し、皇帝の死後は息子のバオダイ帝が工事を引き継いで、1931年に完成しました。
1993年に世界遺産に登録された「フエの建造物群」のひとつで、フエ郊外のチャウチュー山の斜面に建っています。装飾の細かさは、フエの王墓でいちばんだと感じました。
ダナンから日帰りで行ける?行き方と回り方
ダナン中心部からフエまでは約100km、車で片道2時間前後です。帝廟はフエ市街から離れた山の中にあるため、配車アプリの車やチャーター車、現地ツアーで向かうのが現実的です。
フエの王墓は市街の南側に点在しているので、トゥドゥック帝廟やミンマン帝廟と組み合わせると効率的。王宮も含めて3か所を回るなら、個別に買うより約490円安くなる共通券が便利です(料金は基本情報を参照)。
日帰りの場合は、暑くなる前の午前中にカイディン帝廟の階段を上り、午後に王宮や市街を回ると体力的に楽です。

127段の階段と石像が並ぶ拝庭
入口から最上部の宮殿までは127段の階段。最初の石段には龍をかたどった手すりが伸びていて、上るにつれて門、拝庭、碑亭、宮殿が順に姿を現します。
途中の拝庭には、文官・武官・兵士・馬・象の石像が左右2列に並びます。衣服やひげまで細かく彫られていて、ほかの王墓の像より写実的でした。その先の碑亭には、カイディン帝の功績を記した大きな石碑が立っています。







灰色の外観は東洋と西洋のミックス

木とレンガが中心だった以前の王墓と違い、ここは鉄筋コンクリートや鉄、スレートなど当時の新しい素材で造られていて、外観は要塞やヨーロッパの教会のように重厚です。アーチや柱にはゴシックやロマネスクなど西洋建築の影響があり、屋根や龍、雲の装飾にはグエン朝の伝統が残っています。
カイディン帝は1922年にフランスを訪れるなど、西洋文化に強い関心を持っていた皇帝です。一方で、建設費のために税が引き上げられ、当時から批判もあったといわれています。
ティエンディン宮殿は外観からは想像できない内部
階段を上り切った先にあるのが、帝廟の中心となるティエンディン宮殿です。外観はほかの建物と同じ灰色ですが、内部では金、青、赤、緑の装飾の中で、光を受けた陶磁器やガラスの破片が細かく輝いています。宮殿は5つの空間がつながった造りで、中央に皇帝を祀る部屋と墓所があります。
陶磁器と色ガラスのモザイクは近くで見る
壁や柱の装飾は、割った陶磁器や色ガラスの破片を一つずつ貼り合わせたモザイクです。素材には日本や中国、フランスから取り寄せた陶磁器やガラスも使われたとされ、近づくと茶碗や皿の模様が残った破片も見つかります。
図柄は龍や鳳凰、蓮のほか、梅・蘭・菊・竹の「四君子」や、扇や筆、楽器などの縁起物。遠くから全体を眺めたあと、気になる一角に顔を近づけて見るのが楽しみ方です。
等身大の皇帝像とコンクリート製の天蓋
宮殿の中心には、玉座に座るカイディン帝の等身大の像があります。フランスで鋳造された金色の銅像で、その下に皇帝の墓があります。
像の上に垂れ下がる天蓋は、刺繍を施した厚い布にしか見えませんが、実は鉄筋コンクリート製。少し横から見ると厚みが分かり、布のひだや房飾りまでコンクリートで表現されていることに驚きます。
天井画「九龍隠雲」も見上げて
壁と皇帝像に目を奪われがちですが、天井も見逃せません。9頭の龍が雲の間に見え隠れする天井画「九龍隠雲」は、宮廷画家ファン・ヴァン・タインの作品です。宮殿の中央あたりで立ち止まって見上げると、雲の向こうに空が広がっているような奥行きを感じます。
ほかのフエ王墓との違い
| 王墓 | 特徴 | 見学の中心 |
|---|---|---|
| ザーロン帝廟 | 山々に囲まれた広い景観 | 自然の風景 |
| ミンマン帝廟 | 左右対称に建物が並ぶ整った配置 | 敷地の散策 |
| トゥドゥック帝廟 | 湖と庭園のある離宮のような造り | 庭園の散策 |
| カイディン帝廟 | 東洋と西洋が混ざった建築、内部のモザイク | 建物の細部 |
トゥドゥック帝廟が自然の中を散策する王墓なら、カイディン帝廟は建物の細部をじっくり見る王墓。敷地が小さいので、2か所目、3か所目に組み込んでも疲れにくいです。
見学のコツ|服装・時間帯・写真
- 階段が多いので歩きやすい靴で。雨の日は石段が滑りやすく、手すりを使うと安心です
- 階段には日差しを遮る場所が少ないため、暑い時期は開場直後の朝がおすすめです
- 宮殿内は暗めです。スマートフォンで露出を下げすぎないと、モザイクの色がきれいに写ります
- フラッシュ撮影や立ち入りの制限は、現地の案内に従いましょう
基本情報
| 名称 | カイディン帝廟(Lăng Khải Định) |
| 住所 | Núi Châu Chữ, Thủy Xuân, Huế |
| 入場料 | 大人 約920円(150,000ドン)/子ども 約180円(30,000ドン) |
| 共通券 | 王宮+カイディン帝廟+ミンマン帝廟またはトゥドゥック帝廟の3か所:大人 約2,560円(420,000ドン)/4か所(王宮+3つの王墓):大人 約3,230円(530,000ドン)。いずれも2日間有効 |
| 開場時間 | 夏季(3月16日〜10月15日)6:30〜18:00/冬季(10月16日〜3月15日)7:00〜17:30 ※要確認 |
| 定休日 | なし |
| 所要時間 | 約1時間〜1時間30分 |
| アクセス | フエ市街から南へ約10km |
| チケット | 入口の窓口、またはフエ遺跡保存センターの公式チケットサイト |
※入場料と共通券は2026年9月時点で公式チケットサイトに掲載されている金額です。日本円は1万ドン=約61円で換算した目安で、為替レートによって変わります。
まとめ
灰色の階段を上った先に、陶磁器とガラスで埋め尽くされた宮殿が待っている。この落差を味わえるのが、フエの王墓の中でもカイディン帝廟ならではの魅力です。
ダナンからの日帰りでも、王宮やほかの王墓と一緒に回れます。フエまで足を延ばすなら、ぜひ行き先に加えてみてください。



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